ネットリサーチ業界から足を洗いながらも、後に残してきた友人達から情報が入ってきたり、登録しているネットリサーチからのアンケートやリリースを目にしたりしている訳で、やはり興味のある業界であるこちに変わりはない。しかし「これじゃ、だめじゃんっ!!!」と思わされることが多くある。
今日(というかもう昨日だな)、この数年急成長をしているイキのいいネットリサーチ(と言われているが・・・)からアンケートが届いた。↓がそのアンケートの一部だ。さすがにこの小さい画像では文字が読めないが、画像をクリックすると大きい画像がポップアップするので見て欲しい。
この[SQ7]。一体どういうことなのだろう。「あなたは最近3ヶ月間にアンケート調査や商品モニターに協力したことがありますか。」これは、このネットリサーチ会社のアンケートモニターに送られたアンケートだ。そりゃぁ、アンケートに答えていて当然だ。商品モニターの募集だってこのネットリサーチ会社はやっている。このアンケートのクライアントは「アンケート慣れしていない人に答えて欲しい」という意向なのだろう。その気持ちはわかる。自分もそんなことを言うクライアントを相手に仕事をしたこともあるから、担当者の立場もわかる。しかし、しつこいようだが、これはネットリサーチだ。「ある」が選ばれて当然。回答側でもその意図は恐らく分かるはずで、「ない」を選んで、本調査の対象者に選ばれようとするだろう(本調査に行くと謝礼が増えるからね)。
また、パネル管理がしっかりしているところであれば、対象となる(つまり少なくとも本アンケートと同じ分野のアンケートを答えていない)パネルにだけアンケートを送ることもできるはずだ(実はこれはちょっと意地悪な言い方だ。そんな管理が出来ているネットリサーチは自分の知っている限り1社だけだ。それもそういうシステムを持っているが、そのシステムをちゃんと運用しているかは不明だ。)。
はっきり言うと、これはネットリサーチなのに、街頭の聞き取り調査や住民台帳などを用いたランダムサンプリングと言った手法でなければ意味のない設問だよ・・。ずばりいって、やる価値ないね、このアンケート。対象者が想定した属性の回答者が一人もいないんだから。
こんなバカアンケートを平気でやってしまうネットリサーチのあり方を非常に危惧している。こんなことをやっているから、従来型アンケート偏重主義者が蔓延ってしまうんだ。例えクライアントがそういう無茶を言っても「それは誤っている」「アンケートとして成立しないものは実施できない」と言い切れないネットリサーチ会社に明るい未来はない。クライアントの言うがままの人間ワープロ状態で、価格及びスピード競争の体力勝負になるばかりだ。だから自分はネットリサーチから足を洗ったんだ。
その一方で、ネットリサーチでないとできない調査の領域が年々広がっているのは事実だ。ネットリサーチのメリット/デメリットをわきまえて、調査の内容に応じて手法を選ぶべきであり、単に「安くて早い」という理由でネットリサーチを依頼するクライアントもダメダメ会社だし、それを「言うとおりにやればお金になるから」と無責任なアンケートを実施するネットリサーチ会社もダメダメ会社だ。
ネットリサーチの業界団体や研究所を名乗る機関がこの数年で2つほど設立された(うち一つは実質的に活動停止してるけど)が、こういう現状をどう思っているのかな?問いただしてみたいな。