株式会社伊東屋さんとぺんてる株式会社さんという文具界の大御所2社が初めての協業として新商品を発売とのことで、新商品発表会に参加させてもらいました。
発表された新商品は「ITOYA110 ペンジャケットシリーズ」。
ぺんてるのおなじみのペンが伊東屋ブランドでまた新たな商品に生まれ変わります。
その開発の経緯や裏話、そして実際に手にとってのタッチアンドトライなど、文具好きにはドキドキのイベントレポートを。
開催日:2016年9月12日
場所:G.Ttoya 10階ホール
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会場に入ってすぐにサインペンのデザインの変遷の歴史が展示されていて、少しづつ変更されていることがわかります。
この箱のロゴも懐かしいなぁ。
自分にとって伊東屋は憧れがあって(実はここで働きたかった)、ぺんてるといえば特に子供の頃によく使っていて懐かしさと親しみのあるブランド。
その2社が作ったのは「ペンジャケット」。「何に使うの」「何のために使うの?」と感じたけれど、それは詳しくストーリーを聞いてだんだんと「なるほど」に変わりました。
ぺんてるの歴史と伝統
なんと今年で創立70周年だそうです。第2時世界大戦後の教育を文具メーカーとして支えてきたという面もありますね。
ぺんてるにはこの3つのこだわりがあり、
- 「先っぽ」の技術
- 「色」
- 「どこでも・だれでも使いやすく」
その象徴的なロングライフ商品がこの3つ。
個人的にはプラマンは使ったことがないものの、ボールPentelは子供の頃は常に家に何本かあり、自分でも買っていたし、サインペンは今でも使っているし、どちらも思い入れのあるペンです。
「ああ、ボールPentel懐かしい!でもなんだか最近見かけないな?」とぺんてるの方にうかがったところ、最近は量販店にはあまり置いていないもののまだまだ現役商品とのことで安心しました。ボールPentelのあの緑の軸と太めの線と柔らかい書き味が好きでした。
ITOYA110の開発物語
ぺんてるさんの鈴木さん(左)と伊東屋の橋本さん(右)からの説明でした。
現場の人の話は引き込まれますね。
コンセプト
伊東屋さんの「オフィシャルオケージョンで使えるペンがほしい」との思いが開発のきっかけとして印象深かったです。あんまりカタカタすぎる表現ですが、つまり「公式な場面」ということ。
国家間での条約の調印とか、そこまでではないにしてもあらまった場所でも使える「雰囲気」「高級感」をまとった商品が欲しかったんだと解釈しました。
そして、エアタイト(キャップの密閉や空気穴など)といった品質を実現できるのはぺんてるさんしかないと。
先ほどのぺんてるさんのロングライフ商品、いずれも書きやすいけれど「オフィシャルオケージョン」っぽい重厚感とか堅さはないですね。個人的には「そういう要素がないから使いやすいんじゃん!」と思うのですが、自動車業界やパソコン業界などでフラッグシップモデルを作るのにも似たような感覚なのかな?
文具販売店としてもより高みを目指していけば、、実用性とはまた別の価値観や商品の広がりを考えるとそういう方向もあるのかもしれません。
その他の要素もいろいろありますが、「高品質」「手頃な価格」「どこでも入手可能」というロングライフ商品を活かして、なおかつオフィシャルなオケージョンで使えるペンを・・・と言うところからはじまった開発だそうです。
ロングライフ商品に「ジャケット」を着せる
これらの高品質なペンをオフィシャルオケージョンで使えるペンに活かすには、そのリフィル(ペンの芯)をそのままに外装を変えることがすぐに思いつくものの、実際にはリフィルが外装と一体化して作られていることから、これを分離して部品化することにも問題はありボツに。
そして「ジャケット」を着せようという発想に辿り着き、しかも少しづつサイズの違う3つのロングライフ商品の見た目の統一感という伊東屋さんのこだわりの美学までを実現できたのですね。
ロングライフ商品のペンそのものを大胆にリフィルとして扱い、オフィシャルオケージョンで使える雰囲気をまとったジャケットを着せてしまう・・・って、思いついた人すごいなぁ。
これは単に見た目を変えるだけ以上の効果と意味があったのですが、もちろんメーカーであるぺんてるさんは時間で言えば通常の2倍、作ったサンプル数で言えば3,4倍とかなりの苦労をされたそうですが、しっかり成果が出ているようです。
ITOYA110 ペンジャケットシリーズとは
商品としてのITOYA110はこんな感じです。
- リフィルとしてプラマン・ボールPentel・サインペンに対応するジャケット
- マットブラック・ブルー・ホワイト・レッドの4色展開
- 本体5000円+調整リング300円(税別)
2016年9月13日から銀座G.Itoyaで先行発売、順次伊東屋全店で販売を開始とのことです。
写真が下手っぴのため、4色展開なのに奥のブルーがあまり感じられません・・・!
分解して図説するとこのようにパーツは4つで、キャップ(白い)、前軸(黒く尖っている)、調整リング、後軸(白い)で構成されて、これにペンをリフィルとして差し込んで使います。
調整リングがペンジャケットの開発のキーでもあって、これを3種類用意することで、長さの違うプラマン、サインペン、ボールPentelのどれを使っても同じサイズにでき、伊東屋さんの複数本持った際の統一感(美しさ)のこだわりを実現できました。
調整リングの品質感もいい感じで。
PIC222
ブラックが一番重厚感があって、特に堅いオフィシャルオケージョン向きの色。
説明を受けて思ったこと
自分にとって(おそらく多くの消費者にとっても)品質がよいのは前提として(最高級でなくてもいいけど)、リーズナブルで扱いやすいことが一番大事なはずなので、どれだけニーズがあるの?と思ったのですが、狙いはそもそもオフィシャルなオケージョンなのでホームユースではないし、贈答品としての見込みもあり、そうなると5000円/本というのはむしろ安い価格設定なのかもと。
複数のリフィルを気分に合わせて差し替えて使うようなものではなく、ペンをカスタマイズして長く使う感覚なのは、これまでにない市場を目指そうとしているんだな、つまり企業も市場もそういう時期にきているんだなと。
タッチ & トライ
説明やぱっと見はもう充分なのでタッチ & トライで感じたルック and フィールを。
ルック
赤がポップな感じで自分は大好きです。
ポップだけれど、決して軽くはなく、高級な朱肉を思わせる深みを感じます。
ボールPentelの緑のペン先が見えるのはオフィシャルオケージョン的にはちょっとライトな感じ?
白のキャップとITOYAロゴ
象牙の雰囲気をもたせた少し黄色みのある白は伊東屋さんの強いこだわりで実現(ぺんてるさん側の開発は苦労したとのこと w)
フィール
リフィルを入れたペンジャケットを握って感じるのはしっかりした重さとほんの少し感じるやわらかななめらかさ。黄銅と樹脂で作られているからですね。金属の堅さやザラザラ感がが嫌いな自分にはいい感じです。
商品説明の時に「金属を使うことで重量バランスがよくなっている」「軽量なペンにジャケットを着けることで自重を増し、まったく違った書き味になる」との説明があり、「ほんとに?」と思いましたが・・・、確かに違いました!
自然な筆圧になり、またリフィルよりも太くなった軸がその扱いをしやすくしてくれます。周りの方も同じようなことを言っていて、これは狙いが成功しているようです。
悪筆の自分でもしっかりした字がかけている気がしました(気分の問題はありますが)。
それもリフィルに使われているペンの品質がいいことが前提ですね。
手軽さや軽さの面や持ち歩きには不向きですが、それは「オフィシャルオケージョン」では問題になりませんね。
会場の風景
今日の「うれしい」
自分の好きなボールPentel・サインペンが活かされて、新しい製品が生まれていることがうれしくて。
ところで、伊東屋さんでは会場の上の11階に野菜工場を作って水耕栽培に取り組まれていて、ここで収穫されたフリルレタスはG.Ttoya1階のDrinkや12階のStyloで食材として使われているとのことなので、こちらも見せてもらいました。
野菜工場の3連の見学用窓は、旧伊東屋本店の外壁に使われていたステンレスの窓枠なんだそうです。
これが伊東屋さんの良き伝統でありカルチャーなのかな。
ペンジャケットとは関係ないけれど、これが見られたのもうれしくて。
ここでは書ききれなかったのですが、単なるスペック紹介ではなく、両者の思いや苦労を現場の方から聞けることは貴重な機会でした。
水耕栽培のフリルレタスが食べられるCAFE Styloの詳細はこちら