「生活アンケート」日銀がデータ全面訂正

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以前にネットリサーチとレガシーリサーチ~固定観念と迷信に惑わされるな!で書いたことだが、「ネットアンケートは対面調査に比べて、不正確・バイアスがかかっている」訳ではない。対面調査であっても、調査員の質(全体の質の問題と、調査員それぞれの能力のばらつきによる)や、対面の調査を受けてくれる人だけに聞いているという点で、どちらもそれぞれに、バイアスがかかり、また長所・短所があり、使い分けることが大事である。どうもネットリサーチを誤った視点から貶める記事の多い中、「ほらね」と言いたくなるような記事がYOMIURI ONLINEから。

日本銀行は5日、7月5日に発表した「生活意識に関するアンケート調査」で、調査委託先の社団法人・新情報センター(本社・東京)の調査員が本来の調査対象者以外から回答を集めるなどデータをねつ造していたとして、全面的に訂正した再集計結果を発表した。

日銀によると、〈1〉調査員が調査対象先を訪問せず知人に回答させた〈2〉回答を回収しやすい調査対象を補充した〈3〉日銀の再調査で本人確認ができなかった――など不適切なケースが全体の回答人数(2997人)の3分の1にあたる987人分あることが判明した。

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しかし、こりゃぁひどいなぁ。3000人近くに対面調査をして、その1/3が無効回答であったとは・・・。そもそも調査計画では4000サンプルを回収する予定だったらしい。相当の費用が予算として見込まれていただろう。それがこの結果じゃねえ・・・。サンプル数は足りないし、そのうち無効サンプルが1/3を占めるとは。

日本銀行は再調査をして、この調査が適正に行われなかったことを暴いた訳だ。日本銀行はそれを自ら公表し、全面的に訂正し、再集計結果を発表したんだから、お役所系の団体としてはむしろ非常に立派だ。大変な手間であったろうし、またそれを明らかにするのにも勇気がいったことだろう。

この調査の委託先は新情報センターという自分の知らない社団法人だ。おそらくは、再調査にあたっての費用はこの新情報センターの持ち出しになるであろうし、新情報センターは調査業界からは批判を浴びるであろうし、当面は調査を受注することは望めないであろう。
新情報センターが組織的にやったのか、それとも調査員の独断で行ったことか分からないが、「調査ってこんな程度のものなんだ」と世間から思われるのが残念だ。

何を目的として、どのようにその調査が設計され、適正に実施されたかが、問題となる。リサーチ業にしばらく身を置いた者として、そのことははっきりといっておきたい。

そんな話も含め、「ネットだから」「リアルの対面だから」ということで、どちらが優れた調査法かということはなく、つまり案件によって方法の使い分けをし、またその実査が適切に行われ(適切に行われたという監査・検証みたいなものが機能している)たというチェックまでして、初めてその調査が適切に行われたといえるんだな。

【追記】
ロイターより、この件のその後の動向が報じられた。
◆日銀が委託調査会社に損害賠償請求、生活意識アンケートで

また、日本銀行からのプレスリリースも出されていた。
◆生活意識に関するアンケート調査(第23回)結果の計数訂正

●関連リンク
新情報センター、世論調査のデータも捏造した疑い

日本マーケティング・リサーチ協会が「新情報センター」問題について処分内容を公表

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1件のコメント

  1. kira-ism2005年9月10日 10:28 PM返信

    新情報センター、世論調査のデータも捏造した疑い

    8月6日のエントリに関する続報がasahi.comから出されてた。 そもそもは、上記のエントリで書いた日本銀行は5日、7月5日に発表した「生活意識に関するアンケート調査」で、調査委託先の社団法人・新情報センター(本社・東京)の調査員が本来の調査対象者以外から回答を集..

    http://kira-ism.seesaa.net/article/6781601.html

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