久し振りのリサーチネタです。
いつもはニュースレター等で見聞きしたリサーチについてコメントをつけることが多いのですが、今回はtwitterのこの呟きでそのリサーチ(3月4日リリース)を知りました。
twitterでこういった情報を知るというのには時代の変化を感じます。
それはそれでいいことなのですが、どうにもそのリサーチのプレスリリースとそれを掲載するマス媒体がどうにもアレなんですね・・・。
「どこの小学校で調査したんだよ」と思われるのも当然でしょう。
そこで!改めて問題点を纏めてみました。
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まず、事実を羅列しよう。
自分が問題と思っている日経トレンディネットの掲載。
小学生の4割強が自分専用の携帯電話を利用!
NTTレゾナントと三菱総合研究所がまとめた小学生の携帯電話利用に関する調査結果によると、携帯電話を使っている小学生は66.0%で、2007年11 月の前回調査より6.7ポイント増加した。「自分専用の携帯電話を使っている」は43.3%で、同8.9ポイント増だった。
そのニュースソースとなっている(と思われる)ものは以下の通り。
・NTTレゾナント株式会社と株式会社三菱総合研究所の連名でのプレスリリース
・株式会社三菱総合研究所の調査結果
・NTTレゾナント株式会社のプレスリリース
・NTTレゾナント株式会社の調査結果
調査概要は以下の通り
1. 調査対象:
小学校1年生から6年生
2. 調査方法:
「キッズgoo」上での公開型インターネットアンケート
3. 調査期間:
平成20年12月3日(水)~12月22日(月)
4. 有効回答者数:
683名
5. 回答者の属性:
【性別】 男性:14.6% 女性:85.4%
【学年】 1年生:1.8% 2年生:2.1% 3年生:6.3%
4年生:17.9% 5年生:30.6% 6年生:41.3%
さて、問題はここから。
この調査母数(或いはそれを前提とした分析)には以下のような問題がある。
1.この調査自体の問題点
A.地域差を考慮していない(都道府県、都市部、地方等)
B.男女比が考慮されていない
C.学年(年齢)比が考慮されていない
D.男女・学年はクロス集計にて分析すべき
上記のいずれの属性で母集団を切っても、異なる結果が出るはずである。特に6歳児と12歳児では発達度合いも大きく異なる。
しかしながら、有効回答の全てを均質な属性として分析したために、上記で引用したような有り得ない結果を導き出している。
また、有効回答者数も足りないだろう。「1年生:1.8%」は約12人だ。こんなのは統計的に何の意味もない。
2.調査主体の問題点
普通のレベルの調査マンであれば、このような問題があることは人目で認識できているはず。
しかしながら、何の問題もなく「成立した調査」としてリリースしている。
その態度に不信感を持たざるを得ない。
3.報道する媒体の問題
媒体の記者にしても、このような「裏のある数字」をすぐに見抜けないのはその技量に大きな問題があるといわざるを得ない。
実際には「分かっていてもリリースをそのまま載せる事情があった」のかもしれないが、それもやはり不信感を招くだけである。
最後に、上記とは別の角度から見た問題点を挙げよう。
それは、そもそも「キッズgooを使っている小学生」がこの調査に回答しているのだが、彼らが世間の、一般の小学生とは属性が異なるということを誰も言及していないことだ。
インターネットを使っていて、キッズgooを使っていて、ネットリサーチに回答するという小学生は、やはり情報機器に触れやすい環境にあると想像される。
さすれば故の「『自分専用の携帯電話を使っている』は43.3%」という表現なのではないだろうか。
明確に注釈をしなければ、ほとんどの方は「これが今の一般の小学生なんだ」と思ってしまうし、
幾分かの知識のある方には「ネットリサーチはいつもいい加減だなぁ」と思われてしまう。
こういった「回答母集団のばらつき・偏り」を認識しない分析をリリースし、それをマス媒体が何の疑いもなくほぼコピペで広めてしまうことは非常に問題だと思う。
極論と言われてしまうかもしれないが、この調査は成立していないと思う。
或いは、誤った分析をしていると思う。
——
自分は決してネットリサーチを否定するものではなく、むしろ擁護・推進派だ。
だからこそ、ネットリサーチの前提や使い方を誤ったり、故意に誤ったような扱いをして情報操作をすることで、ネットリサーチが貶められることを恐れて、このエントリを書いている。
業界の皆さん、ホントに頑張ってくださいね。
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らきさん
昔はこういうエントリばっかり書いていました
最近はイベントレビューブログみたいになっていたのですが、
らきさんがワタシの「書く魂」に火をつけてくれました w
そして、ひっそりと引用させていただきました w
http://kira-ism.seesaa.net/
ぎゃあw